[ 0132: 怪奇たたみ男 ]
ある日曜日、若い独身男がうとうとと昼寝し、起きてみると頬に畳の跡が。
よくあることだと軽く考えていたら、次の月曜に出社してもまだ消えないどころか、
だんだん酷くなってきたようだ。
課長に仕事の用件で呼ばれたとき、おもむろに書類から目をあげた課長:
「田田見君。そ、その顔は !!!! 悪い冗談はやめなさい」
退社時間になると顔の痒みは一層酷くなる。
ボリボリ掻き毟っていたら、粉が飛び散るのを気持ち悪がって女子社員たちが逃げ始めた。
「きゃー、何なの。粉を撒き散らす畳鰯 (たたみいわし) なんて」
あっちに行けば「ひゃー」、こっちに行けば「キモー」。
見るに見かねた課長:
「田田見君、明日は会社に来なくていい。病院で診てもらいなさい」
「ははー」
田田見君は皮膚科にいったが、医者は首を振るばかり。
「‘Japanese Straw Mat Syndrome’ (畳症候群) なんて学会にも報告されていません。
いっそのこと、整形外科で顔面の全とっかえをしなさい」
「そ、そんなご無体な」
顔からじくじくと腐った汁も流れ始めた。顔面崩壊である。
途方に暮れた田田見君。専門業者に泣きつくことにした。
腕利きの畳職人である。
ところが、これが大正解。
職人は、田田見君のぶざまな顔を土台から直し、顔面は畳替え。
おまけに畳の枠まで。
今や青々とした 新装の畳顔 で気分も日本晴れの田田見君。
顔を隅々まで Dyson で掃除してくれた畳職人の娘さんといつしか恋仲に。
もう顔を畳にべちゃっとつけて寝ないように
東海道中膝枕をしてもらってから仲良く清潔な布団の中へ。
ああ、幸せなるかな新婚夫婦。畳ベビーが生まれる日も近い。
田田見直志 (たたみなおし) ちゃんである。
[ 浅見多絵さんのコメント ]
だれですか、こんな筒井康隆みたいな悪趣味を書いたのは?
[ 西尾三奈さんの回答 ]
はい、私です。
[ 湯会老人のコメント ]
わはははははは。痛快じゃ。
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