[ 0133: ねずみ男の冒険 ]
著者の描く顔は、他の漫画家の作品とくらべて、顔の面積よりもパーツの総面積が圧倒的に小さい。
だから、なんとなく素っとぼけた味が出るのであろう。ねずみ男も例外ではない。
目は大きいものの、鼻が小さく、鼻から歯までの距離が顔面の過半を占める。
と言っても、好色ではない。
本著は、ねずみ男が出演する作品を 18 編 集めた豪華版。
平安時代から現代まで、詐欺師になったり高邁なヨタ話をしたり。
しかし、何となく憎めないキャラである。隠れファンも多いであろう。
これだけの作品を比較対照してみると、著者の経済状態がうっすら見えてくる。
アシスタントがいない時代。背景が淡白だったり着物の柄まで、いちいち点を打っている。
アシスタントのいる時代になると、背景が精密描写になったりする。
つげ義春氏や池上遼一氏だったのだろうか。スクリーントーンを使った作品もある。
ただ、主要人物の描線は、あくまでも著者のものである。
個人的には、「合格」という作品と「空想石」という作品が気に入っている。
「子供の国」はやや中途半端な印象。戦記ものにねずみ男は出演しないのであろうか?
ともあれ、本書は著者が鬼太郎シリーズで有名になる前の作品を中心に集めたもの。
ちくま文庫は慧眼であった。
( これは湯会老人が Amazon に書いた書評 )
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