[ 0070: マンハッタン酔歩 ]
[ 千手春弥さんの出題 ]
とりあえず、 5 x 5 のマンハッタン街路を考えましょう。
仮に私と多絵さんがマンハッタンに出かけたとします。
私は左下隅 (A 地点) に立っており
多絵さんは右上隅 (B 地点) にいます。
私は単位時間ごとに、右または上に (それぞれ確率 1/2 で) 進み、
多絵さんは左または下に (それぞれ確率 1/2 で) 進みます。
それぞれランダムウオークです。酔って歩くわけではありません。
私はだれかに手をつないでもらわないと道に迷うほどの方向音痴ですが、
ときどき単独行動もしたくなります。 (笑)
A 地点を (0, 0) という座標であらわしましょう。
① まず、(x, y) で 2 人が出会う確率はどのくらい?
② あらゆる可能な地点で出会う確率の総和は?
③ n かける n にして無限マンハッタンにすると (n ⇒ 無限) どうなりますか?
[ 西尾三奈さんの回答 ]
まず、任意の (x, y) ではお二人はお会い出来ません。
お二人が歩く距離が同じでなければならないからです。
それに、あともどり禁止ですから。
すなわち x + y = (5 - x) + (5 - y)
x + y = 5 から
バッタリ会えるのは:
(0,5), (1,4), (2,3), (3,2), (4,1), (5,0) だけ。
それぞれに対して経路計算をします。 ( 組み合わせ問題 )
(0, 5) への経路は 5!/(0!*5!)*5!/(5!*0!) = 1
(1, 4) への経路は 5!/(1!*4!)*5!/(4!*1!) = 25
(2, 3) への経路は 5!/(2!*3!)*5!/(3!*2!) = 100
(3, 2) への経路は 5!/(3!*2!)*5!/(2!*3!) = 100
(4, 1) への経路は 5!/(4!*1!)*5!/(1!*4!) = 25
(5, 0) への経路は 5!/(5!*0!)*5!/(0!*5!) = 1
以上の和 (会うことのできる経路の和) は: 252
これに対して、たどることのできる経路の和は: 2^5*2^5 = 1024
したがって、5 x 5 のマンハッタン街路を歩きながら
「あらま、会っちゃった」と言える確率は約
24.6% でしょうね。
無限マンハッタンにすると、π (円周率) が登場するという説がありますが、
細かくは調べていません。
[ 浅見多絵さんの回答 ]
思わず笑っちゃいました。
それにしても、ニューヨーク時代に友達とためしたマンハッタン酔歩は
今も懐かしくおぼえています。
5 x 5で「あらら」が 24.6% というのは多いのか少ないのか。
2 x 2 でも 37.5% (かな?) ですから収束が非常に遅いのかな?
[ 西尾三奈さんのコメント ]
n x n マンハッタンで計算してみましょう。
出会い地点への経路の総和は:
(n ,0) へは:
(n!/(n!*0!)^2 = 1
(n-1, 1) へは:
(n!/((n-1)!*1!))^2 = n^2
(n-2, 2) へは:
(n!/((n-2)!*2!))^2 = n^2*(n-1)^2/4
(n-3, 3) へは:
(n!/((n-3)!*3!))^2 = (n-2)^2*(n-1)^2*n^2/36
こんな感じで計算が進め、合計を n の関数にできたらいいなと思うのですが、
Σ((n!/((n-k)!*k!))^2) のような計算公式がないと無理ですね。
挫折。(泣)
えーい、 10 x 10 までやっちゃえ。
(10!/(10!*0!))^2 +...+ (10!/(0!*10!))^2
= 174756 (正しいのかな?)
これに対して可能な経路の和は:
= 2^20 = 1048576
したがって、 10 x 10 でパッタリの確率は:
約0.167
10 x 10 マンハッタンでも、まだ 1/6 ぐらいの出会いの確率があるわけですね。
もっと収束が速ければ、京都の街は「迷える恋人たち」であふれるのに。 (笑)
結局、円周率は現れませんでしたね。他のランダムウオーク問題を調べてみましょう。
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