[ 0072: 三奈さんのbの検証 ]
[ 湯会老人のコメント ]
西尾三奈さんの立てた重要な b の式を解いてみましょう。
0062 の問題への挑戦です。
sqrt(1600/b^2 + b^2) = ((40/b) - (b-10))
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まず上式がどうやって得られたかを解説します。
* 長方形の面積は 40。
* 縦の長さを b とし、これからまず着手したい。
* その下半分の直角三角形の中に内接円。
* したがって、辺の長さの一部同士が同じ。
下の右の図とはやや違いますが:
底辺の長さの左大部分は BF から、右の残りは正方形の一辺から。
BF = sqrt(1600/b^2 + b^2) - 5
右からの寄与 = b - 5
これらを合計しますと:
(40/b) = sqrt(1600/b^2 + b^2) - 5 + (b - 5)
さて、b に関する方程式を解いてゆきましょう。
平方根以外は右辺に移項します:
sqrt(1600/b^2 + b^2)
= -b + 40/b + 10
右辺を 2 乗した状態は
(40/b - b + 10)^2
= 1600/b^2 + b^2 - 20*b + 800/b + 20
左辺の 2 乗は: 1600/b^2 + b^2 ですから:
消し合う項をまず消します。
- 20*b + 800/b + 20
20 で割って b を掛け移項しますと:
b^2 - b - 40 = 0
ついに 2 次方程式にたどり着きましたね。!!!
解は (1 ±sqrt(1+4*1*40))/2
X = 1/2 を対称軸とする実数解2個です。
(1±sqrt(161))/2 = 6.844,-5.844
⇒ 正の解をとります。
ただし、計算の途中で式を2乗していますから、
b = (1+sqrt(161))/2 をもとの式に代入して検算することが必要です。
左辺 = 8.9999
右辺 = 9.001
OKですね。誤差範囲で。
安心して次の値を使いましょう。
b (長方形の高さ) = 約 6.844
この問題では:
長方形の面積と内接円を持つ三角形に関する情報
(ある頂点とある内接点の距離) だけが与えられており、
どこから手をつければいいかわかりません。
この状態で sin(∠AEF) を求めるためには:
① 三辺を求める (余弦 ⇒ 正弦)、
② ヘロンの公式 (三辺が必要) から面積を、
次に二辺の蟹ばさみでゆく。
三奈さんは
この課題での最も重要な「break through」
(突破口) を成し遂げてくれました。
ちょっと気がつかない 盲点 (blind spot) です。
浅見多絵さんさんは、とりあえず次のように値の呼びかたを決め、
以降の挑戦者たちはそれにしたがっています。
(一点だけ違うのは 最初は a を底辺の半分としていましたが)
青天中学の諸君も参加しませんか?
正憲君はヘロンの公式を既にマスターしています。
変数 (あだ名) |
用途 |
どうやって計算したか/用途 |
b |
長方形の縦の長さ |
内接円と辺の関係を洞察 |
a |
長方形の面積/b |
横方向の長さ計算 |
c |
5 と c で他の部分の計算が可 |
長方形の対角線の長さ計算 |
ええい、このさい全部検算をやり直しましょうか?
さて、手はずどおり計算を着々と:
* a (長方形の底辺)
= 40/6.844 = 5.845, a/2 = 2.922
■ 図と違って長方形は縦長です。!!!
* c (斜辺の長さ)
= sqrt(6.844^2 + 5.844^2)
= 9.000
斜辺 AE:
= sqrt(6.844^2 + 2.922^2)
長さ: 約 7.442
斜辺 EF:(もっとも考えにくい)
右側に隠れた底辺:
= (a * (1-5/c) - a/2)
= (5.845*(1-5/9.000)-2.922) = -0.324
傾いたEFの実際の高さを求める: b*(1-5/c)
高さ: 6.844 * (1-5/9.000) = 2.597
長さ: 約 3.06
■ 図と違って EF は左に傾斜しています。!!!
斜辺 AF:
実際の底辺は全長 5.845*(1-5/9.000) = 2.598
実際の高さを求める: 6.844*(5/9.000) = 3.082
長さ: 約 4.605
ついでに、どんどん行きましょう
まずヘロンの公式で三角形 AEF の面積 S を求めます。
s = (7.442+3.06+4.606)/2 = 7.554
S (面積)
= sqrt(7.554*(7.554-7.442)*(7.554-3.06)*(7.554-4.606))
= 約 3.348
蟹はさみ方式で sin(∠AEF) を求めましょう。
sin(AEF)
= (3.348 * 2) / (7.442 * 3.06)
= 約 0.294
次に余弦定理を経由して sin(∠AEF) を求めますと:
cos(∠AEF)
= (7.442^2+3.06^2-4.606^2)/(2*7.442*3.06)
= 0.9558
sin(∠AEF)
= sqrt(1 - 0.9558^2)
= 約 0.294
「蟹はさみ方式」と「余弦⇒正弦」方式がピッタリ合いましたね。
正解と言えるでしょう。
しかし、出題図ではとても
0.294 には見えませんね。
上記の計算結果を反映した正確な GNUPLOT 描画は:
[ 西尾三奈さんのコメント ]
まあ、湯会老人、ありがとうございます。
私は b の式を立てるだけで、
あとは
狼羊さん におまかせしていましたが、
解きかたのプロセスをよくわかっていなければいけませんね。
座布団三枚さしあげます。 疾矢君ももっと鍛えてやってください。
[ 湯会老人のコメント ]
いやいや、 疾矢君もなかなかの強者です。
[ 0049: 「円錐山」ふたたび ]
を解いたのには感心しました。
[ 大宙乗児君のコメント ]
湯会老人、この問題には正解がまだ示されていないようだから、
英語で書いて難問サイトに投稿したら?
それにしても、出題図では横長長方形と見せて実は縦長だったり、
斜辺 EF が右に傾斜していると見せて計算すると実は左に傾斜していたり、
sin(AEF) を 0.7 ぐらいに見せたり。僕もだまされました。
三奈さんがいなかったら、みんなうまくゆかなかったなあ。謝謝。
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